5-4 装置開発室
5-4-1 施設利用
装置開発室は,平成17年度後期より所外からも実験装置の開発・製作を施設利用として受けることとし,17年12月 末までに9件の利用申請を受け付けた。申請の内容はいずれも分子科学の面白い問題に関係するものであり装置開発 室職員の技術向上にはプラスであった。また,基礎生物研究所などからも申請を受け,自然科学研究機構内にも貢献 する実績を積みつつある。施設利用として所外からの依頼業務を受ける体制に変更する事にともなって装置開発室の 運営委員会を新たに設置した。これまでの運営委員会は各研究系および施設から選出された所内委員で行われていた が,所外の研究者および技術者を含めた委員会とし,運営委員会規定も新たに制定した。
5-4-2 技術職員
装置開発室の担当する領域は機械工作,電子回路工作,ガラス工作の三つがあり,依頼業務の7∼8割を機械工作 が占めている。装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置を開発すると同時に,日常の実験に必要な機器類 を迅速に製作するという二つの役割をもっている。これらの業務は先の割合ように機械工作に集中し,特に迅速性に 対して不満の声もある。技術職員数の配置は機械7(短時間契約職員2含む),電子回路3,ガラス1とした配置となっ ており,人員数の比としては妥当であるが個々の技術職員の技術力,業務に対するモチベーションに差があることが 問題点の一つになっている。事例として,迅速な処理業務が求められるあまり,技術力や処理能力のある一部の中堅 職員に様々な業務が集中し,研究支援の貢献度が高いにもかかわらず,旧公務員制度の範囲でしか評価されないため
「やる気」を失ってしまう事があった。
今後,所内の支援業務や施設利用をさらに充実させて行くためにも,上記の問題点に対策していく必要がある。
5-4-3 基盤技術
装置開発室は UV S OR 施設の創設とともに超高真空技術や精密駆動・制御を手がけてきた事で,これらの製作技術は 装置開発室の基盤技術として持つことができた。しかし,この分野は現在,民間の方がかなり成熟し一般化してきた ため,よほど特殊な物でない限り装置開発室でなければできない技術としての位置づけが薄れている。そこで研究系 の要請に応えられる新たな基盤技術を確立していく必要性があった。現在, 機械グループはマイクロガラス流路, PD MS 用の微細構造金型,超精密スリットなどの開発として「マイクロ加工技術」,電子回路グループはバイオ関連な どの研究をターゲットとした小型化するアナログ・デジタル混在の「大規模集積回路設計技術」を新たな基盤技術と して進めている。
5-4-4 設備
分子研創設時の機械設備がいまだ現役で使用されているものがあるが,一部には老朽化も進んだ物もある。また,新 技術に対応していくためにも最新の機器を導入する設備更新は重要な課題である。平成13年度から精密ワイヤー放電 加工機を導入しその後,測定顕微鏡,C NC 旋盤が設備され16年度末には小型の走査電子顕微鏡が導入された。17年度 末にも微細加工における評価能力を強化する測定設備等が所長の配慮で設置が予定されている。
5-4-5 外部運営委員からの意見
前述した項目1∼3に関して17年度に行った装置開発室運営委員会での議論を総括して,外部委員より将来計画を ふまえた意見をまとめて頂いたので以下に記載する。
[外部委員A] 1.組織の意義
委員長のご意見と同じく,独創的な研究を行うためには,短期間で実験装置を作ることのできるサポート体制がぜ ひとも必要である。外部委員としても,上記の観点から,ぜひこの組織が発展することを希望する。
問題点の整理
委員会で指摘された問題点:評価を公平に行うことが難しく,待遇が働きを反映していない。このためよくできる 人がやる気をなくしやすい。
問題点の解決のために
上記はどの大学においても共通する問題である。まず,楽しく仕事ができるよう,システムを改善する必要がある。 楽しければやる気を持って仕事に取り組むことができる。また,働きに対し評価を行い,待遇に反映できるようにす ることが重要であろう。
①できるだけ興味の持てる仕事を受けられるよう,事前協議を綿密に行う。装置開発室の力が発揮できる仕事を優先 し,メーカーでできる仕事の優先度を落とす。このためには良いコーディネーターが必要であり,その能力開発が必要。
②能力評価,仕事内容・時間などの評価を通じて,待遇を決める。資格取得(情報処理技術者など)を奨励して,評価 の一つとする。
③作成した装置を利用した研究の成果を発表する際には謝辞をつけるよう,依頼を受けるときに取り決める。謝辞の 数を評価に使うことができ,また装置開発室の広報にもなる。
④外部の仕事を請ける場合,秘密保持協定(今までに蓄積したノウハウの拡散を防ぐ)を結び,特許取得も奨励する。 また内部・外部を問わず,作成した装置を利用した研究の成果を発表する際には謝辞をつけるよう取り決め,評価・ 広報に役立てる。
⑤外部資金導入も積極的に行う。外部資金導入を進めるために,共同利用研究施設としての考え方の整理が必要。行 うなら,資金受け入れのための規則整備を行う。会社を作って外部からの委託に対応することも検討する価値があ ろう。
⑥外部資金導入額も評価に利用できる。
⑦人件費固定,年次削減というネガティブ思考ではなく,外部資金獲得,特許獲得などを通じ,組織が発展できるよ うに,外部資金導入を進めるべき。
⑧岡崎近辺には自動車産業などで熟練した技術者が多いので,特にリタイアした技術者に活躍していただくことも,組 織を発展させるために考えていただきたい。これを行うためにも別会社を作ったほうがやりやすいのではないか? しかし技官の人は兼業などが制度上難しいので,外部の仕事を受け,働きに応じて見返りを受けられる制度を作 ることができるかどうか,要検討。
[外部委員B]
装置開発室運営に関する意見を述べたいと思いますが,その前に私どもの職場の現状について報告いたします。技 術部は5課20係47名より構成されています。部の仕事は,大型ヘリカル装置(L HD )に関しての仕事が中心となり,建 設,周辺装置製作,運転業務を研究系と分担して行っています。装置が大型なために,課や係でグループを組んで業 務を行うことが多く,部課長制が機能しております。例えば研究者から要望が出された装置を L HD に取り付ける場合 には,その装置が実際に取り付け可能かどうかを装置技術課が周りにある装置との空間的な干渉や構造などのチェッ クを行い問題が無ければ,研究者と共に取り付け作業を行いますが,装置が大きいために 30t クレーンを使用し,免許 保持者が運転台で操作し,玉がけ者が補助者と協力して装置に玉がけして運転者に無線で操作を指示します。それと 作業の安全を監視する監視者が付きます。このように作業が数名の連携で行われます。
L HD 建設時にはプラズマ点火の時期が決まっていたので,約10年間にわたり年度毎の工程表を作成し,技術部でも 毎月日程の管理を行い業務に遅れがある場合には,人の配置換えや増員するなどして業務の遅れがないよう,工程管 理はかなり厳しくなされて来ました。運転期に入っても L HD 実験成果は科学技術総合会議(首相が議長)で審査され 4段階評価を受けて,その成果結果で予算に影響が出ますので,実験期間中は実験が出来る状態に装置を保つことは 技術部として最大目標とし,真空漏れや液化機故障時は装置技術課を中心にチームを組み,休日・深夜を問わず復旧 に努めています。
加熱技術課は大電力加熱装置を,計測技術課は大型プラズマ計測装置を,また制御技術課は中央制御装置や超伝導 コイルに流す電流制御について建設・運転などを担当しています。また定まった運転については技術職員とほぼ同数 の運転員が従事しています。
分子研装置開発室の業務は,私どもの職場の技術部製作技術課の業務が似ていると思います。製作技術課は資材管 理(定員1)機械加工(定員2名)と電子回路(定員1,支援職員1)の3部門があります。15年まではガラス工作 担当者が居たのですが,定員削減もあり業務量を考慮し人員の採用を止めました。装置開発室とは工作部門で今まで も交流があり,特に相互に自分のところに無い工作機械について相互利用しようとしてきました。
私どもの研究機関の研究者は分子研に比べて研究者の異動が少なく,自分で装置の開発を行うことが多いために仕 事の量はかなり多くあります。特に実験開始前の7∼9月は業務量が増加して超過勤務時間も多くなりますので部品 の外注化を進めています。
装置開発室の活性化についてですが,技術課組織全体とも絡んだ問題となると思います。独立した組織である以上 は,人事や予算等の執行について権限が必要と思います。私どもの職場では部課長制が業務の性格上機能しており上 司が部下の仕事の評価が出来ますので,その評価に基づいた人事を行っています。また技術部予算を請求し研修や運 転業務に必要な物品の購入にあてています。予算規模としては装置開発室と同じ程度ですが,工作機械などの購入に 対しては別途予算請求をしています。
・評価と昇進
技術職員が非常に興味のある技術課題を持ち自主的に研究者と連携を持ちながら,研究に役立つ技術業務を進めて 行くのが理想的ですが現実にはそうは行かないと思います。その場合に技術職員にどの様にやる気を持たせるかが問 題となってきます。上司が部下の仕事を見ていて評価し,その評価により昇進していく仕組みをつくることですが,評 価により昇進,昇格を決める場合には年功序列を崩さざるを得ないと思います。
・マネッジメント
製作する装置が大きくなると一分野の技術,一人の技術者のみでは対応が出来なくなります。そうした場合にポス トの上の者は他分野の技術と複数人の技術職員を取り纏めて業務を行うことになりますが,全体の技術を知っていて 適切に業務を振り分けて工程を管理できる人材の育成も大切なことになります。
・超過勤務
また業務が増えた場合の超過勤務手当ての支払いですが,民間同様,業務報告かあるいは超過勤務命令書にもとづ いて支払われるべきだと思います。私どもの研究機関では技術部だけでなく管理部も実質超過勤務にもとづいて超過 勤務手当てを支払っております。これは法人化にあたり,技術部の会議の中で方針を出して実行したものです。私ど もの研究機関ではプラズマ実験期間中は朝8時35分の実験会議から始まって実験終了は18時45分で,その後超伝導コ イルの電流立ち下げや装置の点検,コンディショニングなど22時になるので技術部として8時間の3つの勤務時間パ ターンをつくり交代勤務制を実施しています。
これらの対応は装置開発室だけで実行した場合に合意が得られるかという問題があるので,課全体で考えなければ ならない課題だと思います。
・研修
技術力向上のためには技術研修が不可欠であり,公的機関・民間で実施されている研修に参加する機会を多くもつ べきと考えます。また他機関の技術職員で技術を持っている人がいれば技術交流できるようにすべきと思います。装 置開発室は過去に名大や北陸先端大学と人事交流を行ってきた経験を今後も活かすようにしたら良いと思います。
以上装置技術室についての提案を申し上げましたが,あまりまとまりのない提案となってしまい申し訳ありません。
[外部委員C]
分子科学研究所装置開発室は,独創的な技術を修得するため,外部からの業務も積極的に受け入れ,分子研内部の 要望に対しても,良く貢献されていると思います。また,研究者への技術支援の他に,技術研究会の開催,技術開発 研究費の獲得,アニュアルレポートの作成,他機関との人事交流,共同開発等全国の同様な組織の中では非常にアク ティビティの高い組織であります。自然科学の研究を遂行する上で,今後とも装置開発室の果たす役割は極めて重要 であります。
(今後の提案)
・ 分子科学研究所の研究の質が常に世界最先端であり,そのような研究者からの技術的要望があり続けることが重要で ある。装置の設計・製作の内製と外注の住み分けをどのようにするか考え,民間になく装置開発室で固有技術を確認 することが将来を考える上で必要である。装置開発室で技術力を高めた技官を逆に数年単位で個別研究室に派遣して より技術を高度化する制度を作ってもよいのでは
・ 装置開発室においては,設計・開発と加工の分業制が徹底しているので加工技術や真空・極低温技術等の未熟なス タッフが設計や開発を担当することになり,技術コンサルタント業務や技術開発業務をさらに向上させるために,内 部でのスタッフの教育システムを再検討する必要がある。設計・開発スタッフにおいても高度な技能を持つ職員(現 在の機械工作担当の非常勤職員)のもとで技術教育を受ける等のシステムも必要である。研究・教育内容の急速な変 化に対し,スタッフの適正な再配置等も必要である。技官の技術力を無駄にしないためにも機構内の交流・移動等配 置換えが容易になる仕組みも必要である。
(外部の依頼業務について)
・ 外部に装置開発室の技術を提供する時は,その論文等においては,その技術の依存度にもよるが,連名を基本とすべ きである。
・ 装置開発室の技術を会社等に自由に流出しないようにある程度の装置設計の権利を保持するべきである
(業務の把握について)
・ 業務報告において,週単位でどの業務に何時間を費やしたかを報告するシステムにして,個人の業務が外部からきち んと見えるようにすること。その業務記録を個人や組織としての業績に活用するべきである。
・ 各スタッフに装置開発室の将来計画案を作成してもらうこと。また,1年間の技術の目標を作成してもらい,1年
(半年)ごとにその達成度を評価し,教育システム等を検討すべきである。
・ 装置開発部門は利益を生み出すことが本来の業務ではないが,今後は企業のような利益を求める概念も必要であり, 年間どの程度の成果を個人や組織が生み出しているのかの試算も必要である。それによって組織や個人の将来計画に 活用すべきである。
・ 法人化とともに,装置開発室でも能力評価が取り入れられる具体的な方策を検討するべきである。
上記のように外部委員を含めた運営委員会の意見等から現在までの運営における課題が明確になっており,特に技 術職員の問題は装置開発室の今後のあり方にも大きく影響する問題であるため,それらに対応する対策を今後行って いく必要がある。